マンションのエレベーターにまつわるあの有名な話、に似たような事件に僕は巻き込まれた。

いや、結局のところ本質は全然違うのかもしれないし、厳密に言えば「巻き込まれた。」という表現はやや不適切で「巻き込まれている。」といった方が正しい。


何はともあれ、まず「あの話」を知らない人のために簡単に前半部分を説明しようと思う。

僕が都内のマンションにある自宅へと帰宅した時のことだ。




エレベーターに乗り込む際にちょうど入れ違いで出て行った人物がいた。




フードを深くかぶっていたため顔は判断できないのだがおそらくは男だと思う。


僕はすれ違いざまに彼と肩がぶつかってしまったのだが、自宅に帰って着替えをすますと驚いた。



なんと先ほど肩がぶつかった部分に血が付いているではないか。






次の日の朝。そんな僕の家に一人の警察官がやってきた。

「昨夜、この辺で殺人事件がありました。不審な男を見ませんでしたか?」

と尋ねる。




瞬間的にフードの男のことが頭をよぎったが、僕は出社前ということもあって「知らない」と嘘をつくことにした。






そして、その日の夜。

仕事を終えた帰宅した僕は、テレビを見て驚愕する。




このマンションで起きた殺人事件についてのニュース報じられており、

「組織的な犯行で事件の全容は解明していないが、犯人の一人が捕まった」という内容であった



そしてその捕まった犯人こそ、今朝、警察としてやってきた男だったのである。






ここまでが「あの有名な話」である。しかし僕の話は続いていく。







「危ないとこだった。」

僕はニュースを見て今更ながら全身が震えだした。フラフラと足元がおぼつかなくなるのを感じた。




と、その時、家のチャイムがなった。

ドアを開くと、刑事らしい二人組の男がいる。



「ニュースでご存知かもしれませんが、このマンションで起きた殺人事件の犯人が捕まりましてね。ただどうやら組織絡みの事件でしてな、全てが解決しているとは言えません。事件当日に何か気づいたことありますか?」


先ほどの衝撃で、僕はもう精神的にいっぱいいっぱいであった。


ここでさらに僕の見たことを改めて話したり、刑事から事件の詳細を聞いて気が滅入るのはまっぴら御免だ。






「すいません。その日はここにいなくて」

再び僕は嘘をつき玄関の扉を閉めることにした。










さらに翌日の夜。


僕は昨日に引き続きテレビの間で立ち尽くしている。


新たに仲間の犯人が捕まったという報道がされている。今回は二人。





そう。昨日この家に来たあの二人組が実は犯人の仲間だったのだ。



「しかし事件はまだ解決しておらず・・・他にこの組織に属する人物が・・・」

淡々と語るアナウンサーの声など入ってこない。2度も死にかけた。



その恐怖で今にもその場に倒れこんでしまうかと思えたほどだ。







今日はもう寝よう。ゆっくり休もう。






そう思った時。






再び、僕の家のチャイムが鳴った。